自社が提供するクラウドサービス

クラウドの導入支援を行うことでお客様にそのメリットを味わっていただいていました。
そしてある時、自分たちももっとクラウドのメリットを味わえないものだろうかという疑問がわきました。

自分自身はクラウドのメリットを享受できているか!?

10年ほど前からクラウドのSI事業に携わっていますが、はじめの頃はとにかくお客様にクラウドのメリットを享受してもらおうと一生懸命になっていました。日本の一般的な企業はまだまだクラウドに対して懐疑的だった時代です。
そのクラウドのメリットは以前にもこのコラムで取り上げた通り、一番はスピードだと考えています。なので、とにかくお客様の要望を素早く実現してあげることに注力していました。そうやって、お客様のあらゆる取り組みにかかる時間を短縮し、より早く新しい事業や業務を進めていただく。そして早い段階で問題点を摘み取り、改善を施す。このサイクルをより速く進めることは、クラウドを導入されるお客様にとって非常に意味があることであるとともに、自分たちのSI事業にとっても十分に意味がありました。それは、最初から要件が決まっているシステムを何か1つだけ作るというのではないため、ビジネスは継続していきますし、そこから派生する機会も増えていくからです。

そんな中、ふと「自分たち自身はクラウドのメリットを本当に享受できているのだろうか?」という疑問が頭をよぎります。
確かにクラウドという“スペース”を利用することで、ビジネスはうまく回っていました。しかしながら、“ユーザーとして”使い倒せているわけではないような気がしたのです。(もちろん自社はセールスフォース・ドットコムのユーザーではあり、そのセールスフォース・ドットコムについてはそれなりに業務で利用していました。ただ、もっと“広い意味”でクラウドを“利用”できていたわけではなかったのです。)

自分たちももっともっとクラウドの良さを享受したい。
そして、それをもっともっと広めていきたい。

そんな風に思ったわけです。自分たちが想定しているメリットは顧客に対して十分に伝えてきた。でも、自分たち自身がもっともっとメリットを享受して、身をもって感じたことをそのまま伝えていきたい。

クラウドサービスを提供する

そう考えると、SI事業だけをただ進めているだけではもったいないということに気づきます。
そうです。自分たちの、自分たち自身が提供するクラウドサービスというものを作ることだってできるのではないかと思ったわけです。
一昔前ですと、“自社製品”を作るというのは大変な取り組みでした。たとえば製造業であれば、部品等の原材料を調達してきて、それをどこかにストックする必要があります。また、それらの部品を使って製品を組み立てるための製造装置も必要です。ソフトウェア産業になると、そうした必要な設備等は少し“小ぶり”になるかもしれません。物理的な部品の調達は不要ですし、大掛かりな製造装置も不要です。ただそれでも、開発環境やテスト環境が必要だったり、“製品”が出来上がるとコピーしてCDに焼き、箱につめて、流通させる必要があったりします。いくら良いものが出来上がったとしても、そこまでの流れを考えないと世の中に出回っていくようなことはなく、決して“自社製品”を持っていると言えるような状況にはならなかったわけです。

それが、クラウドだとどうでしょうか。
まず、環境はそれなりに整っています。開発者側の端末装置は必要ですが、動かす“もの”はすべて雲の上です。テスト環境もボタン一つで用意できます。
製品が出来上がったら出荷することになりますが、いわゆる“出荷”ではなく、ボタン一つで公開するだけです。インターネットに公開されれば、ただちにユーザーは利用できてしまいます。
バージョンアップだって簡単です。
昔は、ソフトウェアの新規バージョンを展開するために、CDを持って全国行脚なんていうのもありましたね。。今となっては懐かしい思い出です。

つまり、クラウドを活用することで、小さな会社でも簡単に“自社製品”を開発し、それを世界を相手に提供していくことができるのです。さらには1回作ったら終わりというのではなく、継続的にバージョンアップを提供していくこともできます。夢のような話です。
クラウドにかかわったからにはこれをやらないという選択肢は無いように感じました。

このような経緯で、自分たちの“製品”としてのクラウドサービスを作り、顧客にサービス提供していくことになりました。ただし、実際にサービスを提供し、継続していくこと自体は決して簡単なことではなかったのですが。。(これについては別途お話しできればと思っています。)
このようにして、クラウドサービスの導入支援者として、またクラウドサービス自体の提供者として、クラウドへの関与は深まっていき、ますますクラウドから離れられなくなっていくのです。

※ 2019/9/27追記
 ここで申し上げている「自社が提供するクラウドサービス」とは、私の前職の会社での提供サービスとなります。