クラウドサービスのメリット
クラウドサービスを利用するメリットとは何でしょうか?
今回は、クラウドサービスのメリットについて考えてみたいと思います。
クラウドは安い!?
「クラウドにすると安いんでしょ?」
よくそんなことを言われます。
さて、実際のところ、そうなのでしょうか?
あるデスクトップアプリケーションを使おうとすると、1ユーザーあたり月1,000円。自社の社員が100人だとすると、月10万円、年間120万円。これが毎年出ていくとなると結構な出費でしょうか。5年間使うとしたら600万円。
一方、ソフトウェアパッケージで買ったら、1本4万円、100人分でも400万円。5年と言わず、もっと使うかも。
毎日使う業務アプリケーションとなると、1ユーザーあたり月10,000円。その業務を行う社員が30人だとすると、月30万円、年間360万円。5年間使い続けると1,800万円。
一方、サーバーを自分たちで300万円くらいで構築して、1本25万円のライセンスを30人分購入したとしても、1,000万円強。
クラウド上に仮想サーバーを立ち上げて、それなりのデータをため込んで、バックアップもとったりして、それなりのパフォーマンスも求めると、なんだかんだで月50,000円。年間60万円。5年使うと300万円。
一方、普通にサーバーを買ってきて、自分たちで立ち上げたら200万円でそれなりのスペックのものが入手できた。しかも5年と言わず10年近く使うかもしれない。
このように考えると、クラウドは決して安くはないということになってしまうのでしょうか。
いやいや、クラウド側にも言い分があるでしょう。
サポート料も含まれているからこれ以上にお金はかからない。定常的にバージョンアップされていくので、新バージョンに切り替えるための費用がかからない。ついでに、サポート切れのリスクも考えなくてよい。サーバーに至っては、運用費用も含まれているので、ユーザーはアプリケーションのことだけ考えていればよい。等々。
目に見える金額だけで比較すると、もしかするとクラウドのほうが高いということになるのかもしれません。クラウドを使わず、自分たちで所有するITの場合には、運用やメンテナンス、管理といった目に見えにくいコストが発生していたりします。それらも考慮して比較するとクラウドのほうが安いということになるのかもしれません。
いずれにせよ、金額での比較はなかなか難しそうです。それは同じ土俵で比較することが困難だからに他なりません。ITの世界では、目に見えにくいコストや目に見えにくい価値があるからです。
そのため、クラウドを利用する際には「安いから」という理由だけで選択するのは危険なような気がします。
最大のメリットは“スピード”
では、クラウドのメリットとはいったい何なのでしょうか。
よく耳にする言葉を並べてみました。
・どこからでもアクセスできる
・運用負荷が軽減される
・柔軟性が高い
・初期費用が少なくてすむ
・セキュリティが強化される
・堅牢な設備が手に入る
・導入までの期間が短くてすむ
・容易に試すことができる
・サービス同士を容易につなぎ合わせることができる
いろいろと言われていることがあります。
上記の一つ一つは、どれをとっても確かに正しいように思われます。
ここでこれらを改めて俯瞰してみると、共通する何かがあるような気がするのです。「時間」という観点でとらえると、すべて良い側面があるのではないでしょうか。
すぐに導入できることで「時間」を短縮することができたり、無駄な作業が不要になることで「時間」を浮かすことができたり、初期費用が安くて容易に試せることで検討するための「時間」をかけずにすんだり。本来であればじっくりと「時間」をかけて構築しないといけないようなものも、ベンダー側があらかじめ用意してくれているような機能やテンプレート、パッケージなどを使うことでボタン一つで使い始めることができたり。サービスを組み合わせることによって、自社に見合ったものを作り出すための「時間」を節約することができたり。
このように考えると、クラウドを導入することは、結果として「時間」を買っていることに他ならないと感じるのです。
そしてこの“買った”時間というのは、単純に“XX時間、得した”という結果にはとどまりません。「時間」は「お金」とは違い、一人一人に有限であり、ためておいてまとめて使うということができません。そして、確保できている(使うことができる)タイミングによって、場合によっては価値が異なります。
例えば、あるスキルを身に付けるために必要な10時間を半年前に確保できていれば良かったのにと思うことはないでしょうか。もちろん半年前には他にやることがあったのでどうしても取れなかった。これはみんなが同じだけしか時間を保有していないので仕方がないことかもしれません。また、この半年間で自分を取り巻く環境が大きく変わってしまったため、今なら10時間を確保できたとしても、あまり意味がなくなってしまった。これは確保できるタイミングによって、その“時間”の価値が異なることを意味しています。
法人の場合、新サービスの開始がクラウドの利用によって1年早まったとすればどうでしょうか。1年間早くサービス提供ができるので、当然1年分の売上が増加します。ただ、それだけではなく、1年間早く開始できていれば、競合他社よりも多くの顧客を先に獲得できるかもしれません。現在の世の中では、ネットワーク効果もあるため、より早くシェアを獲得したほうがより強くなったりします。そんな状況においてはこの1年間のアドバンテージは非常に意味があります。また、この1年間であらゆる経験を積むことができれば、本来サービス開始を予定していたタイミングには、より洗練されたサービスが出来上がっているかもしれません。
クラウドの最大のメリットは、この「時間」という要素においてあらゆる良い結果・成果・効果をもたらしてくれることであると考えられるのではないでしょうか。
企業はクラウドサービスを利用することで“スピード”を手に入れ、さらに自社のビジネスを加速していくことが可能なのです。